卒業発表会内容紹介

毎年6月に学生の卒業研究発表会が行われます。これは、10か月間の日本語学習の総まとめとして、学生が自分の専門分野の発表を日本語で行うというものです。ここでは、卒業発表会のプログラムから、発表のタイトルとその内容の簡単な説明を紹介します。

   
2006-2007年度 2005-2006年度
2004-2005年度  
以前の卒業発表会内容紹介

2006-2007年度

禅による「悟り」: 黙庵の「四睡図」における三幅対の崩壊

Talia Andrei (Columbia University)

本発表では、禅宗の三人の奇人と言われる寒山・拾得・豊干の絵画、特に『四睡図』という禅絵画の画題について述べる。「四睡」とはこの三人と一匹の虎が皆一緒に寝ている構図である。禅宗では睡眠は悟りの隠喩として悟りを表象する。室町時代の禅画家・黙庵霊淵は『四睡図』で、禅宗の理想である悟りの境地により階層などの境界が消え、動物と人間は皆平等になることを描き出している。黙庵は三幅対による「三尊形式」を崩壊し、一つの絵の中に阿弥陀如来の化身とされる豊干を中央に、その両脇に文殊菩薩・普賢菩薩の化身である寒山・拾得をそれぞれ脇侍として描いた。特に注目したいのは、その構成を通じて、黙庵は彼らの二重の役割、つまり一方で仏陀と菩薩、他方で正統ではない仏の道でも悟りをひらいたいわゆる逸脱した僧であることを象徴しているという点である。

インド人向け日本語教育

Ramya Balaji (University of Madras)

インド人エンジニアを対象とした日本語及び日本文化コースを開発する、という将来の目標を達成するために、現在以下の活動を行っています。1)インド人と日本人向けのアンケート作成、2)アンケート回答の分析、3)分析に基づいた適切な日本語・ビジネス慣行コースの検討。今回の発表では、進行中の本プロジェクトの経過報告として、インド人と日本人それぞれのアンケート結果を報告するとともに適切な日本語・ビジネス慣行コースの必要性についてもお話するつもりです。

ICTによる国際開発協力:JICAの遠隔教育への取り組みを事例として

Harvey Beasley(Indiana University)

JICA(独立行政法人国際協力機構)では、近年、先端の通信技術を活かして日本の国際協力の効果をさらに堅固なものにしようとしている。2002年に発足したJICA-NETは現在52ヶ国に上る途上国に遠隔技術協力をしており、遠隔講義をはじめとして、マルチメディア教材、WBT (インターネット上の研修)、TV会議等でJICAの国際協力活動を補完している。しかし、まだ遠隔技術協力についての理解が進んでいないため、JICA-NETの可能性を最大限に引き出せていないのが現状だ。本発表ではこのJICA-NETの活動概要、現在直面している課題、今後の展望について述べる。

なぜ日本アニメは外国人を惹きつけるのか

Robert Bingham(Ohio State University)

近年、日本のアニメが世界中に浸透し、様々な国の若者を惹きつけているとしばしば指摘されるようになってきた。アニメに惹かれる外国人の数は増えているに違いないが、言われているほど多くはないかもしれない。今回の発表ではアメリカに於けるアニメのファンの現状と、いかにしてその状況に至ってきたのかということを見ていきたいと思う。また、ファンがアメリカのアニメよりも日本のアニメに惹かれる原因とは何か、アメリカ人が日本のアニメに感じる面白味とは何か、といったことについても私見を述べたいと思う。

性非行少年の心理

Joseph Brantley(Indiana University)

この十年間少年による犯罪の増加が頻繁に議論されている。しかし、性的な非行としては援助交際ばかりがとりあげられている。だが、実際は少年が犯す強姦や強制わいせつといった非行の率が以前から意外に高い。この発表では少年非行に関して日本の現状を述べ、そして性非行少年の心理を描写する。それから、少年が性非行に至らないための予防法について考えてみたい。

「Sambo」は「サンボ」なのか:日本におけるちびくろサンボ像

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

出産

Emily Burke(University of Oregon)

「人間はどうやってこの世に生まれるのだろうか?」と人は考える事があるだろう。出産とはどのようなことだろうか。世界中の国々で人間、すなわち女性たちが先史時代から子供を無事に産んできた。しかし、急速な医術の進展につれて、かつての人間の出産に関する知恵や意識が急にみられなくなってしまった。出産は一体どのような概念としてとらえられるようになってきたのだろうか。人間にとって医術の進展はいいことで、病気の時には現代の最高な医術は確かに重要だ。しかし、順調な妊娠や出産は病気ではないのに出産は一体なぜ病気のように扱われるのだろうか。そして、アメリカと日本を比べるとその違いはなんだろうか。

ライブドア事件:その会計処理

Richard Castle(University of California, Berkeley)

人生にはいつの間にか目に見えなかった道が突然現れます。この発表のテーマを決める前に就職活動を行った私は、全く何を研究すればいいのか見当もつきませんでした。最終的に監査法人に就職することにしましたが、困ったことに、私は会計のことを何も知りませんでした。そこで、出来るだけ仕事の場面で扱う語彙や知識を学んで使う、という目的のために、私はこの発表のテーマを選びました。メディアでかなり注目を浴びていたライブドア事件です。この発表で明らかにしたいのは、具体的にライブドアの経営者はどうやって会計の抜け道を使って不正会計を行ったかということです。新聞に詳しく載らなかった数字的な説明、それから関係者の役割などを検討するつもりです。

特許侵害における賠償金算定はなぜ必要か

Daniel Copps(DePaul University)

特許侵害による賠償金が大きくなるほど、米国の法律の下にある企業はこれに伴うリスクを軽視するわけには、もはやいかなくなりました。かつて賠償金の脅威はある業界で優位を守ろうとする競合企業が訴訟を起こす場合にほとんど限られていました。しかし最近、むしろ無名の一般個人発明家および何も作らずに特許権だけを集めておいて大企業に訴訟を起こす、いわゆるパテント・トロールが浮き上がってきました。巨大企業が倒産させられるという可能性が非常に高くなってきたのは不合理であるという声が日本の企業からも上がりました。不合理かどうかは別として、賠償金の算定がどのように行われるかを知る必要があります。

日本での英語教育

Matthew Dunn(University of Washington)

日本では英語教育に対する政策がありますか。そして、政策があれば、満足ですか。それとも改良すべきですか。例えば、本当に英語を身につけるために早期外国語教育、つまり幼稚園から外国語を習うことが必要だと思う人がいます。要するに、このような人が英語を小学校で必修の科目にするようにしています。一方、英語などの外国語が必修になれば、日本人の小学生が国語をきちんと身につけることができなくなるので、外国語の勉強をむしろ中学校から始めたほうが適当だという声も強まっています。英語を追放しようという意見さえあります。

メタボリズム:60年代日本前衛建築

Nathan Elchert(Yale University)

メタボリズムという、建物における成長や新陳代謝を訴える建築運動は1960年に日本で台頭し、世界的な注目を浴びた。黒川紀章はこの運動のメンバーの一人で、彼が創造した「カプセル建築」は70年の時代精神を忠実に反映し、メタボリズム建築の代名詞となった。果たして、そもそもメタボリズム理論とカプセル建築は同じものなのか? グループの初期の文章を踏まえ、両者の関係性を検討する。

日本におけるNPOの誕生と発展

Emily Farrow(Brown University)

NPO、すなわち利益を目的としない非営利組織は、世界中で、公益的な活動を行い、社会的なニーズに応えるという点において重要な役割を果たしている。現在の日本でも、NPOが発展しつつある。しかし、日本ではこのような組織は様々な問題に直面し、苦しんでいる。本発表では、NPOの定義を始め、歴史的な背景と最近の動向について述べたい。とりわけ、1990年代から現在に至るNPOの発展に焦点をあてる。そして、最後に現在の状況と問題点を説明した上で、解決方法を提案したい。

天、地とその他の世界:古事記と日本の古代世界像

Joshua Frydman(Yale University)

古事記(または古事記)は西暦七百十二年に成立し、日本語で書かれた一番古い書物です。神話が歴史として記録された古事記は、奈良時代の人々が想像していた世界を叙述する証拠物件です。神道の重要な神々の背景を構築する神話を説明し、皇族の来歴を描写するだけではなく、上代の世界観が初めて日本人の言葉を通じて発表されています。更に、古事記で述べられた世界観は以降の時代でも日本文学に対して影響を与え、現代までの文学に含まれる神道的な要素の本源だと私は考えます。この発表では、古事記に見出された世界観の概要を示し、現在まで続いている日本文学の伝統に対する影響も議論したいと思います。

平安中期における安倍清明と岡野玲子版『陰陽師』

William Garrahan(Harvard University)

史実の安倍清明と小説・漫画・テレビ・映画・演劇・さらにインターネットなどのメディアにおける「清明」との比較は、あらためていうまでもないかもしれないが、なぜ平安中期の貴族陰陽師安倍清明は、いわゆる「魔術師」の役割や破壊的な呪術などのイメージを持たされたのだろうか。その当時の陰陽師の職能を正しく考えれば、人に危害を加えることではないはずだが、様々なメデイアにおいて「清明」は、破壊的な呪術をかける人物として描写されていく。メデイア主導の「清明ブーム」にたいしては、陰陽道や陰陽師の歴史研究の成果を無視した表層的なものとする批判もあるが、平安後期の『今昔物語集』という説話集にはじまり、近世の仮名草子や浄瑠璃、歌舞伎、そして平成の世のブームへと至った「清明」に、そこに映し出された各時代の人々の「期待の地平」、あるいは「メンタリテイ」を解読する試みをしてみたい。

雅楽と現代の音楽

Dylan Greason-Nickolich(Lewis and Clark College)

雅楽は日本の伝統的な音楽の一種で、明治時代より大衆化し広く、一般の人も触れる機会が多くなってきた。だが、多くの人は雅楽が古いものであり、現代の音楽とは全く関係がないものだと考えている。雅楽が歴史の中で持っていた社会的な役割を現代の音楽のそれと比較すれば、異なる点もあるが、共通点も見えてくる。つまり、雅楽も現代の音楽も共に大衆文化として、時代の流れを物語っている。本発表では、まず雅楽は社会の中でどのような役割を持っていたのか、次に現在はどのように大衆文化として存在しているか、最後に、現代の日本の音楽とどのような関係があり、どうやって影響を与えているかについて述べたい。

日本とアメリカの対中姿勢

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

言葉と意味の関係

Nathan Hill(Harvard University)

言葉と意味の関係は哲学の歴史の中でよく議論されてきたテーマである。本発表では、このテーマについて、プラトン、ソシュール、そして、ヴィトゲンシュタインの考えを説明する。プラトンはそれぞれの言葉はそれぞれの意味を直接に指し示すと考えた。一方、ソシュールによれば物と言葉のあいだには直接の関係は全くないとされる。それぞれの言葉の意味は、その言語の中において他の言葉との関係によって作られている。また、ヴィトゲンシュタインによると、言葉の意味は、その言葉の使い方に過ぎない。意味や理解は言語ゲームの規則で決められたことなのである。

アーカイブを越える記憶:視覚的資料に関する過去の利用

Franz D. Hofer(Cornell University)

各国の国民は「過去の幽霊」と一緒に生きている。日本も同じである。最近のニュース、例えば靖国問題並びに憲法改正などに見られるように、過去は現在に於いて存在し、残っている。この発表では「トラウマ的な記憶」を取り上げる。実は、集団的な記憶のレベルでは、トラウマ的な記憶は他の記憶を覆う傾向がある。これを解明するために、日本で使っている中学校の教科書に目を通した上で、小林よしのりの『戦争論』という漫画に注目したいと思う。そこで、トラウマ的な記憶を理解するために、「美学」から借りた概念を通して考えたい。過去の出来事を表象する時、視覚的な資料はどのように主体性を形成するのか。表象に潜んでいる問題を指摘した上で、「個人」的、「国家」的な戦争責任を含め、「歴史的責任」の概念を提示する。

前近代における「女性の力」の操作としてシャーマニズム

Dunja Jelesijevic(University of Illinois at Urbana-Champaign)

前近代の日本では、「女性が政治的な権威や社会に与えた影響はなかった」と一般的に考えられています。それに対して、女性のシャーマニスティックな側面を強調しているさまざまな前近代の資料では、女性が大切な役割を果たしたことが示されています。本発表の目的は、このような資料に書いてある例では女性の政治的な権威への参与についてどのように説明されているか、また政治的、社会的な文脈の中での女性の力の本質についてどのように結論づけられるか、その「力」は宗教的な儀礼の行為者としての女性の存在とどのような関係があるかについて議論することです。そのうえで、前近代の日本の女性観はどのように理解できるかということについて検討したいと思います。

横浜中華街と神戸南京町の歴史

Nadia Kanagawa(Yale University)

横浜と神戸は日本のもっとも重要な国際港として知られている。この二つの町は開港以来、外国貿易を通じて小さな村から大都市になり、戦争や震災により大きい苦しみを味わってきた、という共通点を持っている。それに、両方とも有名な中華街、あるいは南京町がある。しかし、これらの共通点にもかかわらず、横浜中華街と神戸南京町の歴史と発展のしかたは著しく異なっている。本発表では現在の中華街と南京町の形を見ながら、この二つの興味深い文化交錯地を比較する。

九鬼周造と「偶然」を哲学する

Joseph Kaneko(Brown University)

人間は「運命」というものを感じるとき、自らの将来のなりゆきが何か不可避なこと、つまり「必然」に支配されているように感じる。しかし、九鬼周造はライフワークと見做されている著書「偶然性の問題」(1935年)で「偶然」というたまたま起こる出来事の体験を「必然」の優位に立てる試みを行っている。このように「偶然」が森羅万象の支配者とされれば、「運命」の性質も違ってくるのではないだろうか。この発表では九鬼が論じる「偶然性が創出する運命」について探ってみたい。

戦前の大連における阿片貿易で苦力が果たした役割

Miriam Kingsberg(University of California, Berkeley)

私の発表は現代中国の旧満州地域にあった大連という都市の阿片貿易に注目します。1905年から1945年の間、日本帝国の下で、阿片、モルヒネ、ヘロインなどの貿易の中心は大連でした。今までの研究によると、こうした違法な密輸は日本人の商人によって管理されて、いわゆる「苦力」と呼ばれていた中国人の労働者が麻薬を消費しました。この解釈では、苦力の深刻な阿片中毒状態は日本によって意識的に奨励されて、中国人は単なる被害者に過ぎませんでした。しかし、苦力は阿片貿易での被害者のみならず、むしろ相互に搾取したり、売買の利益も得たりする面もありました。事実、中国における阿片貿易は日本人の帝国主義ばかりでなく、配給業者として苦力にも不可欠であったという見方もあります。

日の丸のポートレート:国家と戦後の美術

Namiko Kunimoto(University of California, Berkeley)

本発表では、日本の戦後(1952〜1957年頃)の美術の状況、特に独創的なパフォーマンス・アートや絵画を次々と生みだし関西で活躍したグループ「具体美術協会」について紹介します。次に、当時制作された美術に対する影響力について考察します。戦後の不安な状況の中で、画家はどのように国家を表象したのでしょうか。なぜ日本でパフォーマンス・アートが突然出現し、身体と美術への関わりに注目するようになったのでしょうか。こうした観点から、「具体美術協会」が提示した多くのイベントの理論的な枠組みの可能性を提示するつもりです。

「平家物語」の諸本における敦盛説話

Ashton Lazarus(Tufts University)

「平家物語」には100以上の異本が存在すると言われている。それらには微妙な言葉遣いの違いだけではなく、全体的な文体や語りの構造、人物に対する態度と描写の違いも見られる。この異本の中から覚一本(かくいちぼん)・延慶本(えんきょうぼん)・盛衰記(せいすいき)の違いを検討し、特に敦盛説話がどのように描写されているかを考察する。また、当時の史料と対照し、この物語が成立した時代、あるいは物語の背景となった時代の社会・思想に関して何を表しているかという点も検討したい。

現世利益と悟りの追求:求聞持法の解釈

Jesse LeFebvre(University of Hawaii)

学界には、宗教というものの学問的な概念によって、エリート宗教(経典、哲学、教学、悟り)と大衆宗教(奇跡、霊験、現世利益、占いなど)との対立が存在しているようである。しかし、このような対立はどの程度宗教の実状を表しているのだろうか。この発表は求聞持法という「雑密」瞑想修行の歴史的展開や現状について分析しつつエリートと大衆の宗教を再検討してみようとするものである。先ず、求聞持法の本尊である虚空蔵菩薩を紹介し、儀式の内容を説明する。それから現世利益や霊験などの重要性を念頭に置きながら簡潔に求聞持法の歴史的経緯、日本列島への伝来、そして日本に於ける展開などを考察する。とりわけ、エリート宗教の側に立つ修行者が同時に現世利益と悟りを追求しているという実態に集中する。

大戦中日系人収容者の川柳:サンタフェ高原吟社(1943-1945)

Andrew Leong(University of California, Berkeley)

「高原吟社」とは、ニューメキシコ州のサンタフェー収容所で作られ、1943年から1945年まで続いた川柳会である。「高原吟社」の川柳集には、サンタフェー収容所の様子、また、囚われた日系人の態度、感情などが、何千もの五七五の句でみごとに描写されている。彼ら、柳人は収容所に囚われていても、川柳という手法で共同体意識を作ることが出来た。川柳の作句によって、柵の内の日常的な世界から外の世界まで、内省できるようになったからである。本発表では、高原川柳のいくつかの例を挙げ、高原の川柳人にはどのような見方があったかについて述べさせていただきたい。最後に、残る解釈問題を挙げたい。

日本の会計制度に見る「なれ合い」: カネボウ粉飾決算事件を例に

Esther Ling(University of Michigan)

ここ十数年間の日本経済で、会計は従来より著しく大きな役割を果たすようになってきた。それにつれて、日本の会計制度の欠点も明確に浮かび上がり、その中の一つは、最近アメリカでも日本でもよく耳にする「粉飾決算」と「なれ合い」という問題だ。この発表では、日本の会計制度、特にカネボウ粉飾決算事件を例としてその会計制度となぜその制度でなれ合いが起こりがちなのかを説明したい。会計はビジネスの世界共通言語なので、その重要さを知って欲しいと思う。

茶道と柔道の思想の比較:「一期一会」と「自他共栄」

David McFall(University of Hawaii)

幕末時代の大老井伊直弼は芸術、とりわけ茶の湯を深く学び、暗殺直前『茶湯一会集』を書きあげていました。この茶書のおかげで「一期一会」という言葉が普及しました。しかしながら、「一期一会」が日本の社会に広まるとその言葉が使い古されたので現代ではその意味の力が弱くなりました。一方柔道の創始者嘉納治五郎の「自他共栄」という考えは柔道の世界以外ではあまり知られていません。嘉納は明治時代に色々な柔術流派の技から講道館柔道を創設しました。くわえて、「自他共栄」の修行目的をもって武道の心を新たにしました。本発表では、「一期一会」ならびに「自他共栄」は稽古場でだけではなく、社会の中の人と人、及び人と社会との関係において応用されるものであることについてお話ししたいと思います。

日本、中国、アメリカ(デラウェア州)の法人形態の比較 Comparison of Legal Entities Available in Japan, China and the U.S. (Delaware)

R. Shane McNamara(Washington University, St. Louis)

愛の鞭:教育や躾手段としての体罰などに関する意見

Aaron Miller(University of Oxford)

この発表では、日本のアマチュアスポーツの世界、特に「高校野球」における体罰や体罰をめぐる言説研究の結果を報告する。研究は体罰に関する文献(本・雑誌や新聞の記事など)に依拠し、いわゆるウェーバー社会学の枠組みの視点から、非規範的方法で分析したものである。この文献分析の後、人類学の分野のいわゆる「参与観察」方法にしたがって、アマチュアスポーツの場での実践的なフィルドワークを行う予定にしている。そのため、実際のコーチの仕方ではなく、日本人自身が体罰という指導方法に対してどのような意見や考え方を持っているのかという点に注目する。特に体罰への賛否などを検討して、なぜ、どうやって、どんな言葉で体罰を正当化しているのかに焦点をあてる。

言語変化に対する日本人の意識調査

Timothy Miller(Ohio State University)

私達は自分の母語の変化を意識しているだろうか。本研究は、今現在変化しつつある日本語の一つの例を取り上げ、それに対する日本人の意識をインターネットアンケートを用いて調査したものである。近頃、「違う」という動詞が形容詞化され、「違くない」「違くて」などのような使い方を耳にする。ただの流行語だと言われながらも、若者以外の世代の人にも利用されるようになり、また、歌の歌詞にまで浸透してきている。そこで、「違う」の形容詞的な使用の実態を調査し、得られた結果から、日本語母語話者が「違う」という言葉の変化をどのように意識しているのか、形容詞化の背景に何があるのかを考えてみたい。

天ぷら油は地球環境を救うのか?:バイオ燃料実用化の取り組みと課題

Tyler Morrison(Washington and Lee University)

現代社会は化石燃料に依存しすぎているため、何らかの解決策が必要である。ブッシュ大統領が今年、代替エネルギーの具体的な目標を表明し、エタノール研究に拍車がかかった。しかし、トウモロコシ・エタノールは一時的には貢献できこそすれ、拡大な農地に頼る非効率的な原料であるため本格的な解決策にはならない。そこで最近注目を集めているのは、荒れ地で育つ雑草や廃棄物から低コストで生産できるバイオマス燃料だ。例えば、京都市では食用廃油を原料にして、市バスを走らせている。費用対効果という課題はまだ残っているが、廃棄物で作るバイオディーゼル燃料が普及する可能性が高まっている。果たして、てんぷら油は地球の環境を救うのだろうか?

スタジオジブリのアニメ映画の中における自然のイメージ

Eija Niskanen(University of Wisconsin)

ジブリのイメージは、自然を守るアニメスタジオである。ジブリのアニメの主人公は、美しい背景の中に描かれている。またジブリの代表作品である『風の谷のナウシカ』や『千と千尋の神隠し』における環境問題がテーマとしてよくとりあげられるのは、評論家に度々指摘されることである。また、ジブリの作品は絵巻から影響を受け、動物、とりわけ日本で伝統的な民話や絵画の中に表れる狸、もしくはトトロのような想像上の動物までが登場する。しかし宮崎駿が持つ、ジブリの映画に対する自然観は非常に複雑である。ジブリ作品の中の懐かしい田舎のイメージは、昔の日本に対するノスタルジーであろうか。この発表ではジブリ映画の中における自然について論じたい。

日本における蚕種改良

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

源氏物語:絵とテキストを心的遠近法で読み解く

Joannah Peterson(Indiana University)

源氏物語における心的遠近法について詳細に検討する。高橋享の理論によると心的遠近法というのは『見る(語る)主体が見られる(語られる)対象世界へと入り込んだり出たりする、動く視点において成立する』ということだ。つまり、源氏物語に表れている遠近法は静的ではなく重層的な構造において動的であるということだ。具体的にいうと敬語や助動詞の有無を分析することによってどんな視点から見ているかが明らかになる。宿木(一)の段の本文に対応する絵巻とその詞書を取り上げて、語り手の視点を探求する。ここでは語り手としての女房の役割と垣間見という行為は重なり合っている。それゆえ、源氏物語の中で女房は目であり耳であるのではないだろうか。

明治女学生の組織と団体

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

現代日本の若者の性行動:十代の性行動の現状と社会の認識

John Schneiderwind(University of Kansas)

現代日本の抱える問題を考える時、若者の性行動の乱れが一つの大きい問題として指摘されます。援助交際やセックス産業に関わる中高生が増えてきたこと、また中絶率や性感染症の増加が目立ってきていることが報告されています。そこで、本発表では、若者の「性」に対するモラルが低下してきた経緯とその背景について分析し、原因や責任がどこにあるのかについて考察します。具体的には、正しくない性教育、マスコミの性的な刺激、両親が子供の性行動から目をそらすことなどについて検討します。最後に、日本の若者の性行動を正す手段として、有効な性教育、マスコミの改善などについて述べ、自分の結論をまとめたいと思います。

モテオヤジの作られ方:雑誌が提供するライフスタイルと消費の関係

Samuel Schumacker(Occidental College)

現代社会において、ブランド志向などの消費主義が社会に強い影響を与えていることはまちがいない。雑誌をはじめとするマスコミは、この現象を推進する役割を担っているといってよいであろう。雑誌の記事の中では、各商品だけでなく、消費の仕方まで紹介されており、雑誌はライフスタイルを提供するものになっているからである。それでは、記事自体と商品と読者は実際にどのような関係があるのだろうか。本研究では、提示するライフスタイルに特徴がある雑誌三種の記事の内容と、出版者が公表する読者情報を資料にして、雑誌が提供するライフスタイルに、どのような記号性がつけられたかという視点で、分析した。

IT戦略:ユビキタスネットワーク社会へ

David Sobel(London School of Economics)

90年代のインターネット革命に出遅れた日本は21世紀に入って世界最先端のIT国家になった。今後もこの発展を続けるとともに、社会、産業の諸問題を解決するために、日本は2005年に公表した政策によって、2010年をめどに、ユビキタスネットワーク社会の実現を目指している。この2年間で実現したことも少なくないが、超えなければならない障害も今だ残っている。この発表では、ユビキタスネットワークの概念を説明し、日本の戦略と実施状況を明らかにし、最後に歴史的・国際的な観点を検討したいと思う。

日本人とご利益信仰

Jessica Starling(University of Virginia)

「日本の宗教は何か?」という質問をされると、確かに、神道と仏教のことがすぐに頭に浮かんでくるだろう。だが、実情に即して考えると現世利益こそが日本で最も追求されているものだと言えるのではないか。例えば縁結び、安産、交通安全、受験合格などといった現世利益の祈願は様々な宗派や教団の垣根を越え、日本の宗教の全てにわたるほぼ普遍的な信仰のあり方だ。このような信仰は宗教学の言説において、既成宗教ではなく、いわゆる「民間信仰」「庶民信仰」「民衆宗教」などという名前で分類される。だが、実は仏教の経典と既成仏教の歴史の中にも現世利益の実例は数多く含まれている。この発表では「民俗信仰」と「既成宗教」という分類に疑問を投げかけつつ現世利益の諸要素を論じたい。

現代日本文学に描かれた女性の病気

Grace Ting(Wellesley College)

突然、耳に妙な音が入ってくる、あるいは食欲が暴走しても身体が変化しないという不思議な現象は、病気と言えるだろう。小川洋子の「シュガータイム」と「余白の愛」という小説、それに加えて中島たい子の「漢方小説」を読み、この三編の作品で淡々と描かれている異常性、不確実な出来事や世界を味わい、解釈したい。現代日本文学の二人の女性作家によって書かれたものを通じて、病気、治療、身体に対しての新たな見通しが生まれてくるであろう。

日本のサーフィン発祥地「湘南」

James Topham(Oberlin College)

現在、日本には、75万人以上のサーファーがいると言われている。日本で現在のような形が人々に広まったのは戦後になってからで、1960年代、横浜近郊の湘南で団塊世代の人々から日本でのサーフィン文化が始まったとされている。それ以降、湘南は日本のサーフィン文化の中心となった。しかし、どのようにして日本でサーフィンは流行したのだろうか、そしてなぜ湘南は日本のサーフィンのメッカとなり得たのだろうか? ここでは日本でサーフィンが誕生するに至った経緯とその後の流行を湘南について地理的、文化的、歴史的に研究したことを発表すると共に、そこから見えてきた湘南という地域のイメージについて述べたいと思う。

坂本龍馬:人間関係の考察

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

マイクロファイナンス:その可能性と日本の役割

Lucia Vancura(Columbia University)

マイクロファイナンス(貧困層に対する小規模金融サービス)は貧困を緩和する重要な対策の一つとして、最近日本でも注目を浴びてきている。貧困層に安定したサービスを提供する制度を構築するためには、マイクロファイナンス金融機関の持続性が極めて必要である。この持続性を目的とすると、日本の金融機関の経験、民間企業の商売のノウハウや日本財政政策が国際マイクロファイナンスに与える影響はすくなくない。マイクロファイナンス業界でこれから日本が果たす役割とは何であろうか。今回の発表で日本における最近のマイクロファイナンスに関する討論や活動を紹介し、この役割を検討する。

できごととしての「転向」と歴史性の欠如

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

古代日本と中国とローマの駅制の比較

Kevin Wilson(University of Southern California)

日本の律令国家の中で重要な組織のひとつは駅伝馬制度である。この制度をよく知るために他の国の古代交通制度と比べてみる。日本の駅伝馬制度の特質は深く研究されているが、他の国の駅制との比較はあまりされていないので今回の発表で日本と唐の駅制とローマのcursus publicusを比較しながら、それぞれの利点と弱点について述べていきたいと思う。

沖縄返還運動に於ける「沖縄ナショナリズム」とは何か

Ryan Yokota(University of Chicago)

一般的に、沖縄返還について検討する場合には、返還は戦後の終わりの象徴である、あるいは沖縄人は日本人になりたがっていたのだ、と考えられている。例えば、1945年から1972年に至るまで、「日の丸」や「君が代」など日本国家の象徴が琉球列島でも見られるようになってきた。また、沖縄返還に賛成のデモが頻発し、住民の署名を集める請願運動も起こった。これらの返還運動に対して、当時の沖縄人はどう思っていたのか。沖縄人が沖縄返還を支持する目的は何だったのか。沖縄人は普通の日本国民や日本人になりたかったのだろうか。本発表では、戦後の沖縄に於けるアメリカ占領下の沖縄人の複雑な立場や意見を説明し、「国家」と「国民」と「ナショナリズム」の違いについて詳しく述べたいと考える。さらに、沖縄返還を再検討した上で、沖縄返還に於ける「沖縄ナショナリズム」を示すことを目指す。

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2005-2006年度

「身体を洗ってもアカが出なかった」赤軍と人間性の政治

Matthew Black(Columbia University)

現在のテロ組織や工作員に対する恐怖感について、70年代の赤軍武装行為と粛清、またその受けいれ方と足跡は私たちに何を語るのか。田原総一郎は浅間山荘事件に関して、永田洋子が指揮した13人の「総括」を宗教的な殺害として解釈し、「赤軍=我が内なるアルカイダ」という主張をしている。一方、赤軍のマルクス主義系の批判者は党派主義と第三世界主義の終焉として重信房子、永田洋子を戦略的に批判する。しかし前者が主張する「野蛮な行為は人間の本来を描く」観点は文脈と歴史性が足りない上に、後者の形式主義は暴力の概念的な複雑さを低く評価しているので両者とも充分とは言えない。赤軍員の特異な言葉遣いと「肉体性」を通して、現在の「プロ市民」に対する嫌悪感と繰り返された反共産主義を再考する。

西田哲学における倫理学

Tyler Brown (University of Chicago)

これまで西田哲学は、特にファシストとして批判されてきた。なぜならば西田幾太郎は『日本文化の問題』という著書で、天皇の存在について「無の場所である」などの発言をしたからである。しかしながらそれは適切な評価なのであろうか。これを再検討するために、彼の著書『善の研究』における倫理学をまず説明し、次に彼が説いたこの「善」という概念や集団や個の関係性について、ファシストの思想という視座から評価してみたい。

アメリカの占領に対する日本国民の態度

Delyana Burdjeva-Glover (Ohio State University)

1945年8月14日にポツダム宣言を受諾した日本は、同年9月にアメリカを中心とする連合軍の占領下に入った。それからおよそ6年間、日本の最高統治権限はGHQとその総司令官マッカーサー元帥に与えられる。占領下の日本とGHQの政策は歴史学者により複雑な評価を受けているが、占領政策の展開過程が主に二つの時期に分かれていることは広く指摘されている。1947年にいわゆる「逆コース」が始まるまでの時期は戦後改革が実施された時期と見なされているが、それは日本国民にとって一体どのような時代だったであろうか。占領下の日本を経験した日本人は占領に対してどのような気持ちを抱いていたか、GHQやマッカーサーに対する態度はどんなものだったか、について考察したい。

第三セクターは誰のものか?

Jerry Carter (University of Tennessee)

第三セクターとは何でしょうか? 国際的な定義では、NPOや市民団体など民間の非営利団体を指しますが、日本のように官と民の共同出資による法人を示すことは極めて稀です。身近な第三セクターとしては「パシフィコ横浜」や「横浜ワールドポーターズ」など色々な例が挙げられます。

総務省の調査によると、現在日本全国にある10,159の第三セクターのうち約37%の法人が赤字経営に直面しており、毎年その数が増加しているということです。近年こうした第三セクターは深刻な問題になっており、例えば大阪は金食い虫法人によって破産する可能性があるとも言われています。しかし逆に、成功例も多く挙げられます。そこで、本発表では、成功の秘訣や成功に導く経営方法などについて発表させていただきます。

谷崎潤一郎と映画:純文学の映画化について

Emily Chung (University of Chicago)

谷崎潤一郎 (1886-1965)と聞くと人は当然日本の代表的な「純文学」作家であると思うだろうが、実は谷崎は映画に非常に興味を持っていた。従って、ある程度谷崎の作品にはこの映画への愛情が反映されている。戦後以降、よく彼の文学は映画化されたが、この傾向は特に驚くことではないのである。

谷崎にとって、映画は「普通の夢よりは稍々ハツキリした夢」というかなり理想的なものだった。もしかしたら映画化された作品についての谷崎の判断基準は現実味がないほどに高かったかもしれない。この発表では谷崎の「痴人の愛」と、それを映画化した二つの作品 (一つは1949年、もう一つは1967年)を比較しながら、谷崎の映画観について議論したい。

源氏物語絵巻

Kelly Clifford (Harvard University)

源氏物語は幅広く研究されています。また、様々な源氏絵が色々な時代に描かれてきました。昨年、科学技術の進歩のおかげで、国宝源氏物語絵巻の復元図が新たに完成し、これによって以前は剥落などでよく分からなかったところがはっきりと見えるようになりました。

今回の発表では源氏物語の中から関屋の段を取り上げ、復元図と後世の源氏絵の一つである宗達の源氏物語関屋澪標図屏風を比較します。絵師がどのように源氏物語を解釈したか、それをどのように表現したかということを中心にしたいと思います。

外国人力士の日本語学習法

Daniel Fogle (New York University)

日本に住んでいる外国人は、日本語が上手だとはあまり評価されていないかもしれません。だからといって日本語を自由に使いこなす外国人が、全く存在しないというわけではありません。本発表で注目したいのは外国人の相撲力士です。どうして、日本の野球界などで活躍している外国人選手より上手なのでしょうか。しかも、会社で働いている外国人より敬語を巧みに使い、日本語を自然に話しますが、それはなぜでしょうか。本発表では外国人力士の日本語学習の秘訣を考えたいと思います。日本語の勉強で苦労している私たちの参考になるのではないでしょうか。

日本に於ける陰陽道

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

金山神社とその社会的意味の変遷

Kara Hill (Ohio State University)

日本では、受験合格や交通安全の祈願にみられるように、神社や寺院に実用的で目に見える効用 (現世利益)を求めることが多いという。人々が求めるものは時代とともに変わるため、宗教施設の役割も変わっていくと考えられる。そこで、宗教施設が時代の状況や人々の要求によってどのように変わるかを、夫婦円満、子授・安産祈願、性病除けの神社として知られる川崎市の金山神社を事例として調査した。

宮司へのインタビューなどの結果、神社の運営には地域の人々が深く関わっており、その役割は人々の願い事によって、変遷していくということが確認できた。

「東海道四谷怪談」における幽霊の役割

Ken Kiyota (Columbia University)

幽霊はどのような意味を持っているでしょうか? ただ恐ろしいだけの存在でしょうか?

幽霊は現実の世界の外から来ますが、社会によって生み出され、それ故、それを生み出した社会と文化的な背景を反映しています。つまり、幽霊というものは実際に存在する社会的な問題や文化的な対立を象徴しているということです。そして、幽霊はその社会の支配的な考え方を疑い、社会に対する新たな考え方を提案しています。

有名な歌舞伎作品の一つである鶴屋南北の「東海道四谷怪談」に出てくる幽霊も江戸末期の身分制度の問題と深く関係しています。幽霊の登場は身分制度の問題を反映し、その制度に対して新たな社会のモデルを示しています。

大正日本と中流階級の意識

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

憲法改正 Constitutional Revision

Yoshio Leeper (University of Wisconsin)

国家の基礎である憲法を改正すべきか、あるいは護るべきか、今、日本では改憲派と護憲派の対立が激しくなりつつあります。この議論の結果が、日本の将来に大きな影響をもたらすことは否定できません。

憲法改正に関する世論調査は様々な組織によって定期的に行われていますが、調査結果によると世論はどちらかと言えば改憲派に傾いているようです。しかし、このような意識調査の対象は社会人のみのようです。将来日本を担う青年は憲法改正についてどう考えているのでしょうか。そこで、大学生対象の意識調査票を作成し、5つの大学で実施しました。この調査の結果について発表させていただきたきます。

女性の海外流出とその日本に対する意義

Mark Makdad (University of Illinois)

外務省の調査によれば、海外在留邦人数において1999年に初めて女性が男性を上回ったという。しかし、在留先を欧米諸国に限ればかなり以前から既に同様の傾向が続いている。この女性の西洋指向を促進している原動力はいったい何だろうか。この問題については、文化人類学や社会学の視点からの研究が行われており、西洋へのあこがれ、自己実現への欲求などがその動機としてよく挙げられている。

本研究では、こうした先行研究をふまえた上でさらに事例研究として検証するために、海外在住経験があり (特に北米)、現在は日本に帰国している女性3名を対象に、彼女たちが日本を離れ海外在住に求めたもの、渡米前の意識、帰国後の「母国」への違和感などの聞き取り調査を行った。

株式会社は一体誰のものか

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

ライブドア事件:ルールからはずれたゲーム

James McGee (George Washington University)

1996年、堀江貴文は有限会社「オン・ザ・エッジ」を設立した。東京証券取引所に上場し「ライブドア」と社名を変えた後も「時価総額世界一」を目標とし、買収を繰り返して会社を大きくしていった。しかし今年2月証券取引法違反容疑で逮捕される。その直後堀江が監修した「人生ゲームM&A」の出荷が自粛された。これは企業買収や業務提携などをしながら、総資産額を競うゲームだ。堀江は「人生ゲーム」につまずいたといえる。しかし、このゲームは堀江の生き方だけを象徴しているのか、それとも「金がすべて」という社会の風潮を反映したものなのか。本発表ではライブドア事件に対する意見を分析し、事件の原因・背景を考えていくこととする。

弁財天:曼陀羅と巡礼

Yaara Morris (University of London)

奈良県吉野郡にある天川村は、修験道の聖地として知られる熊野の本宮と密接な関係があった。その天川村には、近畿地方の最高峰・弥山の鎮守として創建された天川神社がある。この神社には珍しい曼陀羅「天川弁財天曼荼羅」が伝えられている。神社の本尊である弁財天は本来インドの神サラスヴァティーであったが、本地垂迹説に基づき修験道の神としても祀られるようになった。今回の発表では、「天川弁才天曼荼羅」の歴史と図像を説明し、また修験道と弁才天信仰との関連について検討する。

耐震偽装問題

Teja Muppirala (University of Illinois)

昨年ヒューザーによる耐震偽装が暴露されたことは、日本全国のマンションの住民の信頼と安心感を根本から失墜させた。本研究が目的とするのは、どのようないきさつで耐震性の不十分な建築物が多数の検査をすり抜け、合法であると公認されたかを調査することである。このスキャンダルに関与した者、すなわちマンションの売り主のヒューザー、建築設計者の姉歯氏、建設会社の木村建設などと、該当する法令のそれぞれの責任と問題点を明確にしていきたい。

ひきこもりにおける日米文化の背景について

Tommy Ou (Yale University)

ひきこもりとは、最近誰でも知っている言葉だが、はっきり定義を下すように言われて、それができる人は少数だと言えるだろう。

この発表ではひきこもりに対する誤解を解き、今医学界で認められている定義に基づき、ひきこもりという現象をもたらす文化背景を検討したい。特に、社会形態と家族の文化を欧米と比較し、日本における個人が自分以外の社会的実体をどう認識し、どのように反応するのかという問題について考える。そして、引きこもりの原因を明らかにしようと思う。

横浜の大空襲

Val Penascino (University of Pittsburgh)

子供の頃から第二次世界大戦に興味があり、横浜の戦争関係について調べたところ「横浜大空襲」のことがよく出てきた。広島と長崎の原爆、東京の空襲はよく知られているが横浜の場合はそうではない。今回、横浜に住んだことがきっかけで、この大空襲について知ろうと思い発表の話題に選んだ。

1945年5月29日朝9時半頃から、この横浜はまるで地獄のようになった。アメリカ軍が無差別に焼夷弾を落とし、日本の国民に戦争の恐ろしさを植えつけようとした。わずか1時間の空襲で横浜の中心部が全焼してしまった。

今横浜に住んでいる方々に、この土地で昔おこったことをぜひ知っていただきたいと思う。平和国家日本の国際都市横浜はたった60年ほど前は戦場だった。発表では、大空襲を実際に経験された方とのインタビューを通し、空襲の下で生活した市民の無力さを明かにする。

日本の音楽雑誌写真:芸術と商業の異種交配

Jessica Polichetti (University of Montana)

日本の音楽雑誌に掲載される写真は一体どんな役割を果たしているのだろうか。「ROCKIN’ON JAPAN」「SHOXX」「音楽と人」など、雑誌のほとんどが写真の「芸術性」にこだわっていることから見ると、このような出版物の中にあっても写真は「芸術」と呼ばれてもいいのではないだろうか。この発表の中で注目したいのは、音とイメージ、文章と写真、歌手とファン、雑誌と読者、そして「美」と「商業」の複雑で興味深い色々な関係である。芸術の境界が曖昧になったこの時代、音楽雑誌の写真は一つの解釈しか許さないのではなく、重層的な意味を持ち、芸術と商業の異種交配をもたらすに違いない。

JETプログラム終了後の進路

Shannon Quinn (University of Washington)

20年前に設立され、毎年外国からの約6,000名の参加者が日本全国で活動中であるJETプログラムは、しばしば英語教育の面では批判される。しかし、参加している外国人の日本理解を深めるのに貢献している点もあることを見落としてはならない。実際、日本政府は、JET終了者が日本と母国の関係作りに活躍し続けることを期待し、JET同窓会に経済的な支援を行っている。

この発表では私の個人的な経験と関係者のインタビューで得た情報を交えてJETプログラムの問題点と可能性についてお話しする。

著作権の近代化

Nathan Reaven (Ohio State University)

基本的に著作権とは一体何だろうか。日本の音楽産業は幅広い市場であるが、著作権はどのような役割を果たしているのか。過去10年間、インターネット時代を迎え著作権に対する脅威が広がってきた。この脅威に対する日本とアメリカの政策の違いを比較する。音楽著作権の規制はどのように変わったのだろうか。ラジオ、カラオケ等の伝統的な著作権の利用と、最近普及したネット配信に関する著作権の利用についてもあわせて分析する。

「特別ニーズ」の子どもたち

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

謎の国―渤海

Jesse Sloane (Princeton University)

渤海とは、かつて東北アジアにあった国です。「かつて」と言っても、いまなお国際紛争の焦点になり続けています。

渤海は現在の中国と朝鮮半島に重なる領土を占めたのですが、古代渤海がどの国の歴史に帰するか、中国か韓国か、それとも曖昧なユーラシア史か、という問題に対しては各国の学者はそれぞれの主張をしています。そして、この議論は現在の国境の正当性に結びついています。今回の発表で、私は渤海のケースを通して民族が太古から時間を貫いて存在してきたという考えが思い込みであることを明らかにしようと思います。

佐多稲子のプロレタリア文学作品における女性像

Joanna Sturiano (Stanford University)

この発表では作家佐多稲子 (1904-1998)のプロレタリア文学作品を4つ取り上げる。「女店員とストライキ」 (1929)、「研究会挿話」 (1930)、「自己紹介」 (1929)と「煙草工女」 (1929)という短編小説にはそれぞれプロレタリア運動家の女主人公が登場する。これらの人物の基となっている女性像を掘り起こした上で、それが作品の中でどのような役割を果たしているかを分析する。次にこの女性像といわゆる「普通の女性像」との対比を行い、最後に、この作品に見られる文学作風と典型的なプロレタリア文学の比較を試みてみたい。

日本の広告に見る英語

Jonathan Tapp (University of Chicago)

日本の広告は変…。こういう文句を外国人からよく聞くが、何が変なのかと尋ねると一つの具体的な答えしか出てこない。その返事は「英語」だという。外国人が英語を見て、広告に引っかかるのは、国語としての日本語と外国語であるはずの英語が同時に載っていること、つまり広告会社側は消費者に両方とも理解してもらうことを期待しているという点である。

そこで、なぜ日本の広告で英語が使われているのかということを研究の中心にし、様々な資料を調べることにした。雑誌の広告を収集し、カテゴリー別そして記載雑誌別に分析してみた。この結果を参考にし、仮説を立ててから、実情について伺うために現職のコピーライターの方々にインタビューさせていただき、仮説・分析を再考した。その内容について発表させていただきたいと思う。

宗教マンガ:個人化・商品化しつつある現代日本の宗教

Jolyon Thomas (University of Hawaii)

外国語の「religion」という概念の訳語として導入された「宗教」という言葉には定義・解釈の問題が少なくない。宗教に対して憧れと違和感を感じた日本人は信仰と理性を折衷するものを求めて来た。その結果、70年代から宗教の個人化と消費化が顕著になり、オルタナティブ行為や商品 (占い、オカルト、ヒーリング等)が宗教の役割を果たすことになった。これらの商品・行為の中で比較的見落とされているものがマンガである。この発表では「宗教マンガ」というジャンルの特徴を検討し、その消費者および教団・教義に対しての影響を探る。

アメリカにおける日本人学校・補習授業校

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

山本昇雲と近代の視角化

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

日本のクリスマス:本物か偽物か

Anne Watzka (Yale University)

日本では多くの伝統的な年中行事が消えていく反面、残された行事の意味や内容が大きく変化している。その典型的な例として日本のクリスマスを分析したいと思う。外国から伝播したクリスマスの文化的な要素は、日本の伝統的な年中行事と競合したにもかかわらず普及した。しかし、なぜクリスマスは日本人のあいだに浸透したのだろうか。今回の発表では、明治時代から現在までのクリスマスに対する考え方や、その過ごし方の変化を検討した。研究方法として、文化変容論、文化触変研究のための覚書、ポストモダニズムの理論を用いている。

ライブドア対フジテレビ、敵対的買収に関する日本の法整備

Ian Wright (University of Virginia)

本発表では、まず「M&A」と「敵対的買収」を定義する。「M&A」とは、簡単に言うとある会社が他の会社の支配権を獲得することであり、「敵対的買収」とは、友好的買収と違い、被買収企業の取締役や経営陣の抵抗がある企業買収のことである。

次に、2年前のライブドアによるニッポン放送の買収の挑戦を敵対的買収の一つの例として挙げ、日本でのM&Aの歴史と規制の変遷を概観する。戦前は、財閥による電力産業と鉄道会社の企業買収が活発で敵対的買収もあったが、戦後は、日本での企業買収は激減した。しかし、完全になくなったわけではなく、1950年代から現代にかけてしばしば企業買収が話題になっている。

最後に、現在の規制状況に関して発表する。1996年のビッグバン、新会社法とこれからの規制改正案という3点に注目し、日本の企業買収市場はこれからどうなるかについて考える。

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2004-2005年度

れいぶんくんー日本語例文検索

Jay Alabaster (Princeton U)

1990年代にインターネットが普及するとともに、オンライン辞典が出現しました。「和英・英和」辞典はその一種であり、単語の意味の検索にとどまらず、漢字や例文の検索などもできます。しかし、ほとんどのオンライン辞典はそれぞれ独立した固定データを使用しているので、今まさに書かれ、読まれている「生」の日本語を参考にできないのです。……そこで、「れいぶんくん」が登場! インターネット全体がデータのもとになるため効果的で、多様な生きた日本語を検索でき、いろいろな用途に活用できます。

ぜひ「れいぶんくん」をお試しください。

黒井千次に於ける「働く」ということ

Ryan Atwater (U of Washington)

この発表で、私は黒井千次という作家の『時間』という短篇小説集を取り上げます。この短篇集の中の小説は高度経済成長時代における「働く」ということを考察しています。「聖産業週間」では、或るありふれたサラリーマンが突然に仕事に対して非常に熱心になります。「時間」では、もう一人のサラリーマンがメーデー事件に参加した記憶と戦っています。「穴と空」では、三人の男が休みを取って、熱心に穴を掘っています。これらの作品を含め、この短篇集は高度経済成長時代における個人的な問題意識を発掘します。「働く」ことの価値や目的は何でしょうか。「働く」ために、自己を抑圧しなければならないのでしょうか。

「走れ、走りつづけよ」における狂気:『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』大江健三郎より

Davina Bankole (Yale U)

1969年に発表された大江健三郎の「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」という短編小説集から「走れ、走りつづけよ」という一編を取り上げて、分析したいと思います。一人の登場人物がエリートの階段から転落し、狂気に落ち込んでしまうのですが、複雑で、様々な種類の狂気が示されています。「走れ、走りつづけよ」という言葉はどういう意味でしょうか。個人的な卓越を追い求める事でしょうか。けれども、必死に走りながら、皆は不可避な狂気に向かっているのではないでしょうか。人間はただ逃げているのではないでしょうか。狂気を主題として描かれているこのストーリーは政治、国際関係、性的な逸脱、周りと調和できない自分、という大江らしいテーマについての作品です。

民家の現状を再解釈する

Jenny Bazzetta (Washington U in St.Louis)

ふるさとの象徴でもある民家建築は江戸時代に非常に普及したが、明治を迎えると近代的な生活にふさわしい新たな建築様式が必要となったため、民家は次第に衰退していった。やがて民家は農村の近代化や高度経済成長のために激減し、政府は1966年から全国民家緊急調査を実施した。「民家は大切に守らなければならない…」こうした考えが浸透し、民家は文化財として「保存」される存在となった。しかしその一方で、「町(村)おこし」のための観光資源として民家は民俗芸能や諸行事の舞台となるなど「活用」される存在にもなっていったのである。保存と活用という矛盾する二つの文脈において、いったい民家はどのような変遷を辿ってきたのだろうか。

本発表では、民家に対する文化政策や神奈川県内の民家を通して、現在の民家の状況を論じたい。

鎌倉時代における災いとそのための儀式

Kristina Buhrman (U of Southern California)

近代以前の思想の中で災いは単なる不幸ではなく、深い意味も持っていた。中国から伝来した儒教では、自然異変は天命・天意を表し、朝廷を評価するものである。日本で生まれた思想によると、異変やたたりを通じて神々の意思が伝えられ、占術の立場からみると非常な自然状態には個人の運命も反映されている。その上、いうまでもなく災いは撫育すべき民に困難をもたらすことである。したがって、天変地異が起こったら、権力者にとって対応策は重大だと考えられている。新しい社会構造が作られつつあった鎌倉時代前半において、災いそれぞれの継続性・予測可能性・差異を考慮しながら、鎌倉幕府と京都の朝廷の災いについての意識と責任感を研究しようと思う。

日本人の長寿:伝統か科学か

Jessica Busch (U of Hawaii)

日本人の平均寿命は女性が85歳で男性が77歳、世界の中で一番長く生きる。まだ決定的ではないが、この先例のない平均寿命を説明するために遺伝や社会生活や食生活など多数の仮説が立てられている。長寿パターンはこれらの一つの仮説というより、複雑で様々な要素に影響を受けている現象のようである。西洋近代社会では生物科学論は民間信仰と結びついている。明治維新以降、西洋科学が重視された日本ではこの科学と伝統がどのように結びついているのだろうか。この発表は日本の生物科学、文化と伝統概念の関係に注目し、長生き現象について九州の高齢者の考え方と生活を医療人類学的に考察する。

職務発明者の相当対価

Adam Cardamon (U of Hawaii)

日本の会社や研究所などで働いていて新技術などを発明した人は、「職務発明者」と呼ばれる。日本の特許法35条によると、ある発明者の特許を受ける権利は、発明者に帰属することを原則としている。その上、雇用者は、発明に関わる権利を承継することもできる。その権利を受ける代わりに、雇用者は、「相当の対価」を発明者に支払わなければならないとしている。その対価について不満がある発明者が、自らの会社を訴える事例が最近増えてきた。これらの事例に関わる判決や背景を検証してみたい。

横浜のインターナショナル・スクールにみる国際教育の人気

Jennifer Connelly (U of Minnesota)

日本を始め世界各国では、経済発展と共に生まれた教育競争が減速する気配はない。それどころか、国際化の影響で競争は更に激しくなっている。国際的な舞台で子供を有利な位置に立たせたいという願望を持って、インターナショナル・スクールに入学させようとする親は年々増加している。このグローバルな現象をローカルな規模で探ることを目的として、横浜インターナショナル・スクールと横浜中華学校に入学を希望する日本人保護者の動機を学校側の視点から比較した。

明治時代における公娼制度ならびに廃娼運動:近代化のダブルスタンダード

Ann Marie Davis (UCLA)

周知のように、日米和親条約、いわゆる神奈川条約(1854年)に伴って、日本の政治や、経済、文化などがはなはだしく改革された。その激変のなかで公娼制度、そしてそれと矛盾した廃娼運動がともに欧米から日本に導入された。私の発表では、この二つの事柄をダブル・スタンダードとして説明・検討して行きたいと思う。その際横浜でのケースを一つの例として取りあげたい。

ODA政策と世論:ミャンマーをケース・スタディとして

Malcolm Dort (Carleton College)

日本の政府開発援助(ODA)は途上国の国民の生活を向上させ、地域の安定に貢献する目的で行われている。また、ODA大綱に書かれているように「民主化の促進と基本的人権及び自由の保障状況」は援助の基本条件である。しかし、一方で、日本はミャンマーをはじめとする圧制的な政府にODAを実施していると非難されている。この発表では、日本のミャンマーに対する援助体制に焦点をあて、外務省、通信社、NGO等の資料と、インタビューを用い、ODAと世論との関係について考えることとする。

高尾山信仰の歴史的展開

William Dunbar (UCLA)

現在、東京都八王子市にある高尾山はハイキング・スポットとしてよく知られている。しかし、この山が元々観光地ではなく、霊山であることはあまり知られていない。今日でも山頂には、飯綱大権現という天狗を本尊として祀る真言宗智山派薬王院有喜寺が威容を誇り、地域の信仰の対象となる一方で、山伏が修行を行う修験道の霊山という一面も持っている。この発表では、744年の行基菩薩による開山の時から現在までの高尾山の歴史を紹介する。更に、地域において高尾山が果たしてきた役割、及び交通機関の発展とともに進んだ観光地化という現象についても、いくつかの点を加えたいと思う。

平家物語の図像学:侍のアイデンティティと歴史的構築

Mark K. Erdmann (U of London, SOAS)

(本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

憲法改正:どこから、どこへ、今はどこ?

Maria Farkas (Johns Hopkins U)

日本国憲法は、制定されてからほぼ60年間全く改正されていない。その憲法が、なぜ今年、国会やメディアなどで重大な議論になっているのだろうか。今までに提出されたいくつかの主要な改正案の主な論点は何であろうか。憲法改正実現の見通しはどうであろうか。ほんとうに憲法の改正は必要なのだろうか。改正にどんな利点があるのだろうか。このような問題について、一外国人の意見を述べてみたい。

横浜市「G30」計画:昨日のゴミは明日の資源

Michael Folland (Lewis and Clark College)

現在日本は「循環型社会」を作るために、いろいろな方策を取っている。その中で横浜市は「G30計画」という2010年における全市のゴミ排出量を2001年度に対して30%削減する計画を推し進めている。環境への負荷を低減するためにゴミの分別やリサイクルの重要さは不可欠だ。が、350万横浜市民に徹底的にゴミを分別してもらえるようにすることはなかなか難しい。そのため横浜市は様々な啓発活動やPRなどを行っている。本発表ではその啓発活動やPRを紹介し、その効果について考えたい。

「G30計画」が成功すれば、横浜市のイメージがよくなるだけではなく、将来「G30計画」はゴミ削減のためのモデルとして見られ、全国の地方自治体に大きな影響を与えるのではないだろうか。

鈴木梅太郎と日本生物化学

Kevin Fujitani (Ohio State U)

約100年前、栄養学は、一種の革命であった。ビタミン理論の発明以来、当時のさまざまなビタミン欠乏性疾患などのために、日本、欧米の政府が栄養についてのキャンペーンをすすめはじめた。その一部として、生物学研究にも政府が資金援助をした。有名なものの一つは、鈴木梅太郎氏の研究室だった。大学教授は士族出身であることがふつうのこの時代、鈴木氏は静岡県の農家に生まれた。にもかかわらず、さまざまな成功をおさめる。日本の絹産業に貢献し、ビタミンB1と考えられた化合物を発見し、合成酒を作り上げた。昭和18年に文化勲章を受賞した。発表では、鈴木氏の研究とその意義について紹介したい。

待ちと遊歩:若者と渋谷の空間

Isaac Gagne (Georgetown U)

渋谷にいる若者たちは、実際に何をしているのだろうか。私たちの渋谷に関する印象は、ほとんど70年代・80年代のイメージに基づいているが、現代の渋谷に遊びに行く若者たちの行動、特に、ハチ公前の「待ち」と、街の「歩き」はかつてと異なる。社会学、心理学、都市計画の論理に基づき、フィールドワークやアンケート調査から得られた情報をもとに、携帯電話が若者に与える影響、不況と都市計画に影響された消費、それからメディアにおける渋谷の扱い方を考察する。

現代のオートゥール:岩井俊二と是枝裕和

Timothy Goddard (Harvard College)

近年、日本には独創的、個性的な作品を作っている映画監督がいる。このような監督は独自のスタイルで世に現れて、オートゥールと見なされてきた。岩井俊二と是枝裕和という二人の監督に注目して、なぜ岩井と是枝がオートゥールかという質問に答えたい。両監督の映画を分析して、現代オートゥールという現象を明にし、文化的な文脈と芸術的な影響を説明したいと思う。オートゥールは監督1人の現象なのか、それとも周りの文化や人間と結び付いているのか。

「我が一念の発心を楽しむ」:『発心集』鴨長明

Aaron Hames (Washington U in St.Louis)

平安時代の末から鎌倉時代の初期にかけて、日本では飢餓、疫病、戦争といった数え切れないほどの災害が相次いだ。その結果、仏教の役割が拡大し、大衆にまで仏法が広がった。この流れを展開させた僧の一人が、鴨長明であった。『方丈記』を始めとして、様々な仏教を題材とする書物を創作したが、その中で最も説法的な作品は『発心集』という説話集である。本発表では、鴨長明が当時の人々に仏心をもたらすために、どのように『発心集』を書いたかということについて検討したいと思う。

日本のベンチャー企業の環境

Andrew Hazelton (Stanford U)

アメリカのヤフー、マイクロソフトなどの会社は日常会話に出てくる。日本でも戦後の何もない時代ホンダやソニーが創業し、国際的な大規模な会社になった。現在、ライブドアというベンチャー企業がニュースの話題になっているが、そのような企業はアメリカより少ない。ベンチャー企業は新しい市場を作るし、就職機会も作って、経済を促進するので、ベンチャー企業を支援することは政府の優先事項になるべきである。

本研究は日本のベンチャー企業の環境と政府や民間企業のベンチャー支援方法の分析を目的としている。政府の方針、金融制度の変化、人材の移動を通して現在の日本におけるベンチャーの状態を明らかにする。又、それをアメリカの状態と比べて見たい。

経済産業省の現在のアジア諸国に対する経済連携政策

Brandon Higa (U of Southern California)

本研究の目的は、日本の東南アジア諸国に対する経済連携政策の変化について細かく考えることである。従来、経済産業省の経済連携(FTA:Free Trade Agreement)の推進に関する提言は十分に行われていない。そこで、このプロジェクトでは自分の経済産業省のインターンシップの経験と研究にもとづいて、経済産業省の現在の経済連携政策を明らかにしようと思っている。経済産業省はどのような政策でアジア諸国と自由貿易を作っているのかを考察する。また、世界経済への影響を中心に、アメリカ合衆国や欧州連合への影響にも言及する。そして、様々なアジア諸国に対する経済連携政策の特徴も明らかにしたい。最後に、将来に経済連携政策はどのように変化していくかについて考えてみたい。

「横浜の市民」としての總持寺

Joshua A. Irizarry (U of Michigan)

日本仏教の曹洞宗の大本山總持寺という寺は1322年に能登半島(今の石川県)で開かれた。しかし、1898年(明治31年)に突然の火災が起こり、この能登半島にある總持寺が全焼した。檀家の強い反対があったが、能登半島で再建するかわりに、横浜市の鶴見区に移転することになった。このようにして1911年(明治44年)總持寺は「横浜の市民」になった。

しかし、横浜で生まれ一生横浜で暮らす市民にとってさえ、しばしば總持寺は「何をしているか分からない隣人」である。そこで、本発表で總持寺の歴史を簡単にご紹介したい。特に總持寺の開祖はどんな人だったか、どうして總持寺は横浜に移転されたか、總持寺の人は横浜市民や横浜市などと新しい関係を作らなければならなかったが、どのように関係を作ってきたか、また、今まで檀家や一般の人にどのようなサービスや施設を提供してきたかなどについて話したいと思う。

日米特許法:先願主義と先発明主義

Benjamin Keim (U of Washington)

日本とアメリカの特許制度を比べると、いくつかの異なる点がある。例えば、二人以上の人がほぼ同じ時期に同じような物を発明した場合、誰が特許権を得るかという問題の解決方法はその一つである。日本は、最初に特許庁に発明の出願を申請した人が特許権を得るという先願主義を採用するのに対し、アメリカは先に発明した人が特許権を得るという先発明主義を採用している。この二つの異なる制度の背景と実際の影響を検討する。

NPO・NGOの活動の現状と今後の課題:国際協力・交流団体の調査

Christopher Kodama (U of Washington)

阪神大震災から10年、日本の市民セクターは大きく発展し、ボランティア精神は小学生から年配の人達にいたるまで日本の社会に浸透した。公益を目的とする組織が増加し、活動目的は多様化、その活動場所は国内から海外に広がった。このような発展により日本の国際協力NPOやNGOはスマトラ沖地震・津波に対し、速やかで十分な対応が出来るようになった。しかし、国際協力を目指すNPOやNGOは、現在重大な問題に直面している。この発表では、NPOやNGOの具体的な話を通じて、国際協力がどのような問題を抱えているのかを説明し、今後、どのようにNPOやNGO組織を強化したらよいかを検討したい。

マクドナルド、心疾患、医療制度

Andrew Lee (Yale U)

一般的にアメリカの医療制度は世界一進んでいると見なされている。しかし、ここ十年ほど、様々な学者やジャーナリストたちによってアメリカの医療制度は批判されてきた。また、2000年の世界保健機関の世界医療制度順位調査によるとアメリカの医療制度はコスタリカに次いで世界で37位に位置づけられている。それに対し、日本の医療制度は10位であった。

本研究の目的はこの結果を考慮しながら日本での心疾患死亡率を他先進国と比較し、どうして日本の心疾患死亡率が今の低い状態であるか検討することである。心疾患の死亡率から見たアメリカと日本の医療制度の違いが発表の中心となる。

歌舞伎における悪:弁天小僧の世界

Patrick Luhan (Columbia U)

江戸時代幕末の歌舞伎に悪人を主人公とした「白浪物」が現れた。江戸中期元禄時代に作られた「夏祭浪花鏡」等の芝居にも一種の悪人が主人公として登場しているが、時代が進むにつれ、悪人が主人公という傾向は強まり、歌舞伎だけでなく他の文学のジャンルにもその傾向が現れた。

白浪物は当時混乱した社会背景を反映し、退廃的であるとよく言われている。本発表では、白浪物の代表的作家である河竹黙阿弥の「青砥稿花紅彩画」(白浪五人男)をとりあげ、白浪物とは単に当時の社会情勢を反映したものだけではなく、その白浪物の「世界」の特徴を発展させたものから産み出されたものであること、また、白浪物は退廃的であるというより、むしろ、「美」を表していることを論じたい。そのために、当時の浮世絵や文学の傾向、そして幕府の改革の影響を分析した。

山川捨松

Amity Malack (Earlham College)

明治時代前半日本政府によって欧米に派遣された岩倉使節団の参加者として5人の幼い日本人女性がアメリカへ渡った−これが日本で最初の女性留学生である。岩倉使節団の男性参加者はアメリカで7ヶ月だけ過ごした後、イギリスで任務を続けることになった一方で、女性は派遣団員としてアメリカで10年間を過ごす事になった。私はこの5人の留学生の中の一人、山川捨松について発表したい。特に彼女の日本に帰国してから受けた社会的な障害と彼女がこの障害をどう克服したかについて述べる。

山友クリニック:無料医療ニーズに応える診療所

James Malenkos (Indiana U)

日本人のほとんどは医療保険に加入しており、先進国の中で一歩先をいくものに違いない。しかし、東京都の台東区、いわゆる「山谷」で路上生活をしている人々のほとどはその制度から、もれてしまっている。日本国憲法第25条には「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と書いてあるが、山谷のおじさん達のような特別な医療ニーズに応じられるのは、厚生労働省だけではなく「山友クリニック」のような施設である。そこは、数人のスタッフとボランティアの医師や看護師の努力と忍耐のおかげで、健康保険証、資産、住所さえ持たないおじさん達が治療を無料で受けられる。本研究では、発表者の実習体験に基づき、さらにボランティアの医師や経営者へのインタビューを交え、山友クリニックの仕組み、歴史、日常活動、財政的な面などを紹介する。この発表をお聞きいただき、無料医療ニーズへの意識をぜひ高めていただきたい。

人間の不在感を表現する「水と油」

Lara Mones (Middlebury College)

ポスト舞踏期に出現し、ジャンルの全く違うものを巧みに組み合わせる日本唯一のマイム集団「水と油」。言葉を使わず、哲学的な概念を用いながら、新たな舞台芸術の領域で身体表現を試みている、個性豊かなこの四人組が内外から高い評価を得ている。20世紀のフランスで作り出されたDecrouxのパントマイム手法をもとに、ダンス、演劇、音楽、コメディを融合した彼らの作品は、日本的だといえるのだろうか?否、そうではないのだろうか?私達はこの「水と油」というグループといったいどう接すればいいのかについて、この発表を通して検討してみたい。

野毛ストーリー

Jon Pal Mouzakis (Yale U)

横浜みなとみらい21地区と野毛。この二つの地域は競争関係にあると言う。しかし、地下鉄みなとみらい線の開通後、野毛は集客力が落ち、今やMM21のきれいで魅力的な環境に対抗できなくなったと思われている。確かに野毛はMM21によって、間接的には影響を受けたと言えるであろう。というのは、横浜市によるMM21の発展計画を通して、東横線が廃止され、結果として物質的に野毛へのアクセスを奪うことになったのである。しかしそれだけではなく、心理的なアクセス不足の問題もある。つまり、初めての人には入ることさえ難しい。何がどこにあるか分からず外から見ると、まるで別の国のようである。しかし、野毛はまだ活気と魅力がある町である。この発表ではその魅力を皆さんにご紹介したいと思う。

「婦人こそ社会の基」:植民地朝鮮における人口統制、不妊、女性のアイデンティティー、1937-1945

Jin Kyung Park (U of Illinois)

女性の妊娠と出産は単純に個人の問題ではなく、国家の人口政策と結びついていると言われている。これは日本の近代史でもよく見られる。二十世紀初頭の日本では、「産めよ、増やせよ」というスローガンでよく分かるように、人口を増やすことが国家的に望まれていた。私の発表では日本の植民地であった朝鮮では女性の妊娠・出産と人口政策はどのような関係があったのか、それと共に、女性の不妊はどのように受け取られていたのかについて問う。さらに、不妊はどのように管理されていたのかについても検討する。つまり、これらを通して朝鮮では女性の不妊と女性のアイデンティティはどのように結びついていたのかに答える。

広告における外国人像

Susan Pegues (Georgetown U)

日本の広告の中にはかなりの頻度で外国人が登場するが、これは一体なぜだろうか。この疑問に基づき、日常で接する広告を分析したところ、外国人が登場する広告は(1)美容系、(2)セレブ系、(3)非日常系の3つに分類できることが分かった。本発表では、それぞれについて、詳しく説明すると同時に、広告に外国人を使用することの目的と効果について考察する。また、ハーゲンダッツを事例としながら、広告表現の変化についても説明する。

意味と言う結核(やまい):嫌悪、エロチシズム、現実のパラダイム

Elisheva Perelman (UC Berkeley)

プラトンによると芸術はただ社会の現実の偽物に過ぎず、アリストテレスにとって芸術は現実と関わる治療手段だそうだ。スーザン・ソンタグと柄谷行人は、芸術においてはよく病が社会のメタファーとして使われると書いた。この『意味という病』的パラダイム、あるいはプラトン的考え方やアリストテレスの議論が正しいとしたら、日本の伝染病−結核−が最も猛威を振るっていた大正・昭和初期の文学はどういう意味を持っていると言えるだろうか。この極めて簡潔な概観のもとで、結核という病、結核患者のイメージ、そしてその利用のされ方を検討しようと思う。

9.11以降の日本

Crystal Pryor (Brown U)

2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ事件は、日本の政府や国民にも大きな影響を与えた。国民の安全に対する意識や自衛隊のあり方は変化し、外交・安全保障政策の決定は官邸主導になりつつある。こうした変化は個別に分析されがちであるが、この発表では、国民の意識と政府のテロへの取り組みとの関係を明らかにしていきたい。まず、同時多発テロ事件発生以降の外交・安全保障政策、特に自衛隊派遣にかかわる法律の成立や議論について述べ、次に新聞等の世論調査の分析を行うこととする。

横浜寿ドヤ街

Mark Rogoyski (U of Texas)

日本で3番目に大きい簡易宿泊所のまち、いわゆるドヤ街である寿町を紹介したい。横浜市中区にある寿町は、戦後は日雇い労働者を寄せ集めておくためのまちであった。しかし、バブル崩壊後は失業者が増加し、そのうえ労働者の高齢化という問題を抱えるようになった。

現在、屋外生活者が多い寿町は、そこに住む労働者たちにとって暮らしにくいといってもよいが、様々な団体から支援を受けている。つまり寄せ場のまちから福祉のまちへ変わりつつある。横浜といえば、確かにみなとみらいをはじめ、中華街や元町などの華やかな名所が思いうかぶ。しかし、角を曲がった所に寿町も共存している。偏見やステレオタイプ、または無関心を捨て、現実の寿町も意識してほしい。

横浜市の外国人児童向けの日本語教育指導

Karen Seamans (Georgetown U)

横浜市教育委員会の平成16年度統計によると、約2000人の外国籍児童が小・中学校に通っている。この児童たちの学習支援は今まで「日本語指導」に力が注がれる傾向にあったが、この2・3年、日本語だけではなく「母語」による教科指導などの全面的な学習支援に向かうようになった。また、今まで行われてきた授業外支援の国際教室や日本語教室だけではなく、授業内での支援も始められるようになった。この傾向の背景には公的、民間、そしてその二者をつなぐ存在であるYOKE(横浜市国際交流協会)の活動がある。YOKEの役割を中心にこの変化について今回の発表で紹介する。

日本企業と外資系企業の社風

Dorothy Shih (Cornell U)

日本のポップカルチャー・ブームの影響でアニメやドラマが世界中で人気になっているようです。それを見て、日本人はそのような人たちだと間違えて思い込んでしまう人も多いことでしょう。これまで私は旅行で何回か日本に来たことがありましたが、住んだ経験はなかったので、外国人としての既成概念を持っていました。この発表のために、日本企業と日本にある外資系企業に勤めている人にインタビューをさせてもらった結果、間違った日本のイメージを持っていたことに気がつきました。みなさんも日本の企業に、間違ったイメージをお持ちではないでしょうか。この発表では、様々な企業の実際の姿をお伝えしたいと思います。

「ラストサムライ」の勝元対「たそがれ清兵衛」の清兵衛:本当の武士生活とは

Stacie Shinsato (U of Hawaii)

西洋の教育を受けた人々が持っている侍に対するイメージと日本人が持っているそれとは異なるという気がする。最近上映された映画「ラストサムライ」に出てくる侍は理想的な人物として描かれているが、「たそがれ清兵衛」では、侍はみすぼらしく格好悪く描かれている。実際の日本の歴史や新渡戸稲造の「武士道」という本の内容を考えてみると、「ラストサムライ」よりも「たそがれ清兵衛」の侍の方がより実際の侍の姿に近いことがわかる。江戸時代の武士の本当の生活について考察したい。

宮本百合子とその「転向」

George Sipos (U of Chicago)

宮本百合子(1899-1951)は1927年から1930年までソヴィエト・ロシアに滞在し、帰国してからプロレタリア作家として活動し始めた。1924年に有名な「信子」という私小説を書きながら、またその時にはプロレタリア文学運動について何も知らなかったにも関わらず、宮本はどうして1930年にまったく違う知識人としてソヴィエトから帰国したのか。そして、共産主義者になるという宮本の行動は1930年代後半のいわゆる「転向」(共産主義者としての活動をやめること)のような行動として見られるのだろうか。本発表では以上の点を中心に議論したい。

株式会社の分析方法

Michael Sirvint (Indiana U)

証券会社の株価はどのように計算されているのでしょうか? 実は有価証券の株価の計算方法はそんなに難しくありません。これは企業の営業によって得られる現金(キャッシュ・フロー)と密接に関係します。この関係を理解するために、簡単に計算書と企業競争環境との結びつきに触れながら、この重要な二つの柱はキャッシュ・フローの計算に繋がっている事を重視したいと思います。キャッシュ・フローの分析の例として、東京証券取引所の一部に上場されているカッパ・クリエイトという株式会社を取り上げたいと思います。

植民地朝鮮における日本人警察官

Michael Sprunger (U of Hawaii)

最近の韓国での半日デモは、植民地時代からの日本の帝国主義に対する恨みを表している。大日本帝国による植民地支配からの開放後ほぼ六十年が経過しているにもかかわらず、朝鮮半島の植民地の過去の歴史に対する苦悩は今日もなお残っている。

おそらく、朝鮮における植民地支配のイメージとして一番印象深いのは警察であろう。警察には幅広い責任と権威があり、日本政府や朝鮮総督府の政策を実行する道具として機能していた。さらに、しばしばその組織は腐敗し、また社会の中で彼らの力を行使したと言われている。

しかし従来の研究は、当時の警察官や巡査の募集方法やその給与形態、訓練方法などを明らかにしていない。それゆえ、本発表では朝鮮警察の半数を占める日本人警察官の募集、訓練などの調査を通して「朝鮮警察」の新たな一面に光りを当てたい。

写真で見る戦後横浜

Adam Steckler (UC Berkeley)

現在世界有数の大都市である横浜市は戦争直後の混乱から現在までどのような戦後復興の道を辿ってきたのだろうか。空襲、戦災、占領、食糧難、闇市―このような事柄がどう結びついているのだろうか。そして、横浜市民はこの困窮生活をどう乗り越えようとしたのか。本発表では、当時の写真を中心として、「その時」の横浜の様子を簡単に紹介ながら、この問いに答えて行きたい。これらの写真を通じて、当時の横浜市民の苦労、辛抱と努力をはっきりと浮かび上がらせたい。

年中行事を通した地域の学び方:横浜市立杉田小学校の事例

(本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

茶道の日米比較

Kristin Surak (UCLA)

茶道というのは日本でも海外でも日本の伝統的文化だと見做されている。しかし、日本におけるお茶とアメリカにおけるお茶の実践は同じ意味を持つであろうか。この質問に答えるため、2000-2003年にかけて関西の都市とロサンジェルスの稽古場で参与観察を行った。本発表ではこの調査に基づき、茶道がアメリカで実践される場合、日本国内で行われる場合と比較して、どのような変化が生じるかに焦点をあて、報告したいと思う。

現代の女性歌人

Ellen Tilton (Carleton College)

中城ふみ子の短歌について発表します。1922年北海道で生まれた中城は肺癌と乳癌に冒され、乳房切除の手術を受け、31歳で亡くなりました。短歌集として『乳房喪失』と死後編集された『花の原型』がありますが今日は『乳房喪失』からの短歌をいくつか取り上げます。最初は精神的な復活と復活の制限というテーマを探求する早い時期の短歌の分析をし、それから乳房切除後の孤独や絶望を表している短歌を見て行きたいと思います。

「アジア主義」と橘樸

Torsten Weber (Leiden U)

世界における日本の立場についての諸議論のなかでは、1885年、福澤諭吉により発表された「脱亜論」は恐らく最も知られているものであろう。これに対して、欧米列強によってアジアの植民地化に抵抗すること、又は東洋の伝統的な政治、社会、経済制度の設立を唱えた「アジア主義」という異論は軽視される場合が多い。それは日本のアジア諸国に対する侵略を正当化するプロパガンダにすぎないと見做されたためである。

この発表では、アジア主義の概念を紹介し、中国研究家でありジャーナリストでもある橘樸(1881-1945)のアジア主義的な思想を考察したいと思う。

「日系一世」VS「日本人」:海外移住資料館の展示分析を通して

Jane Yamashiro (U of Hawaii)

ある出来事について理解しようとする時、どんな立場や視点から説明されるかによって、微妙な違いが生まれるということを意識する必要がある。その出来事に複数の国が関係している場合、その相違にはさらに気を付けなければならないのではないだろうか。それぞれの国の社会的文脈や歴史的背景を含めて、理解することが必要だと思われる。日系アメリカ人の歴史を見る時には、どのような点に注目するべきであろうか。この発表ではJICA(国際協力機構)の海外移住資料館に展示されている言説の分析を通してこの問題について検討したいと思う。日系アメリカ人の歴史を語る時、日本語と英語ではどのようなズレが生じるのであろうか。ひとつの展示を例として挙げ、分析してみたい。

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アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター
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